タイロックの愛と良心。 Modern Dog『That Song』

Modern Dogの10周年記念コンサートまであと16時間を切りました。
なので、昨年11月に発売された、
最新アルバムのレビューをアップします。
これを書くことで、自分自身をさらに盛り上げていこうという目論見です。
タイトルはタイ語で『デート・ソーン』。
タイ人に聞いたところ「まぶしい日の光」という感じらしいです。
英語タイトルはタイ語に引っ掛けて『That Song』。
まずはバンドについて軽く紹介。
タイ音楽が好きな人には、かなり昔っから注目されまくっていたこのバンド。
だいたい日本語で紹介されるときには
「タイ・オルタナバンドの雄」なんて形容詞がついて、
「チュラ大出身でイギリスに留学経験がある知性あふれた音作り」
「10年も活躍してるベテラン」なんて説明が付くみたいです。
でも、これらのフレーズ、僕にとってはあんまりピンと来ませんでした。
それまでも一応「キーパーソンだから」とアルバム買ったり、
適当に聴いたりしてましたが、あんまり熱が入ってなかったです。
熱が入り始めたのは、昨年4月に開かれたMr.Zのコンサートを観てから。
Mr.ZがDJを務め、Bakery Musicのアーティストが新しい方から登場して歌い、
徐々にBakeryの歴史をさかのぼっていく趣向のこのコンサートで、
Modern Dogは大トリとして登場。
それまでも充分に熱くなっていた会場の雰囲気が、
彼らが登場した瞬間、ふっと空気が変わりました。
場が沸騰したというか、ニトロで加速したような感じで
それはもう信じられないくらいの盛り上がりよう。
しかも、1曲(曲名不明)歌ってコンサートは終了。
あれだけでかいコンサートを、たった1曲で限界まで盛り上げ、
しかも満足感を客にきっちりと与える。
「Modern Dogってめちゃくちゃすごい!」と初めて実感しましたよ。
この4枚目のアルバムから、「抑え」ではなく「好き」で聴くようになりました。
バンドの存在を知ってから好きと思えるようになるまで
まるまる4年もかかってます。おそっ!
で、前回から3年かかってリリースされた今回のアルバムですが、
彼らがこの3年という期間に積み重ねたものを
きっちりと出し切った感じがします。
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そう思う第一の理由は、その制作スタッフ。
今回のアルバム制作には3人の日本人が関わっています。
チボ・マットのYuka Hondaさん、
Buffalo DaughterのYumiko Ohnoさん、
ベテラン・エンジニアのKazuyuki Matsumura(Zak)さん。
さらにレコーディングも何曲か東京でやったようです。
(この人たちのこと、僕はぜんぜん知りません。ごめん)
Modern Dogのメンバーは、
たしか2002年にタイフードフェスティバルに参加した辺りから、
SOI:MUSICつながりで、日本のアーティストとの交流を頻繁に行うようになったようですが、
そのときに手に入れたコネクションを
きっちりと今回の音作りに反映させているのではないでしょうか。
と書くと、
「日本の音楽水準は高いから、日本のアーティストが参加してアルバムの質が上がった」
と受け取れますが、僕は、それだけじゃないと思います。
海外のアーティストは、
彼らが積み上げてきた10年をリアルには知らないわけですよ。
だから、今までタイ人の中で作り上げられてきた
「Modern Dogらしさ」に囚われていないわけで、
その分、彼らの音楽だけを純粋かつ客観的に評価して
音楽のよさを引き出すために、何もないところから作業できたんじゃないかと。
そうやって完成されたこのアルバムですが、
その音は、今まで以上にさらにパワフルかつ切ない感じになっています。
音楽を言葉で表現する能力がないので、
インサックさんのブログの言葉を借りると
「ゆったりとしているようで変幻自在、いつのまにかギターがディストーションバリバリになったりもするんですが、全体を統一するトーンは静謐なイメージ。」です。
僕がさらに付け加えるなら、
今回のアルバムはさらにボーカルはじめメンバー全員の音が
段違いにパワフルになっています。
彼らの音はなんというか、
「沈みゆく夕日を眺めつつ、とめどなく涙があふれてくる」といった感じなのですが、
今回のアルバムでは、
その夕日はとてつもなくオレンジで、
その涙は川となってあふれてくるような感じです。
聴いていて切ないのに、体の心から力がわいてくる、そんな音楽です。
これまでの彼らのアルバムは、
必ず「変わってる」というか実験的な楽曲が少なからず含まれていて
メロディや歌詞の作り方に「一歩進めてみた感」があったのですが、
今回のアルバムは、
アルバムそのものの作り方や
バンドとしての底力そのものに「一歩進めてみた感」を感じました。
今回、コンサートに行くにあたって、
彼らのアルバムを全部聴き倒してみたわけですが、特にこのアルバムで思ったのは、
彼らがデビュー時に掲げた
「Rock Never Dies, Dog Never Lies」という言葉通り、
ロックをより生きたものにするために、嘘のない真心をもって、
彼らは常に前に進み続けているのではないか、ということです。
まさに、タイロックにかける彼らの愛と良心がぎゅっと詰まった一枚といえるでしょう。
あっ、なんか偉そうな締めくくりになっちゃったけど、
いまは眠いのでこれで許してください。