静かだけれど、忘れがたきタイ映画。『帰り道(パーダンベーサー)』

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そして2012年に公開されたタイ映画の個人的ナンバーワン作品はこちら! 東京国際映画祭でも上映された『帰り道』(原題:ปาดังเบซาร์、英題:I Carried You Home)でした。
2012年のタイ映画については関してはメジャー低調、インディーズ大当たりといった感じです。
個人的には「興業成績1億B以上」「その年を代表するヒット作」の基準なのですが、メジャーな映画は興行成績1億Bを突破したのが昨年12月末に公開された『ATM』1本のみ。GTH7周年を記念して制作された『ラック7ピー・ディー7ホン』も6000万B代と振るいませんでした。
(ちなみに興行成績データについてはこちらを参照しています。


一方のインディーズ系作品については、上映期間や館数は非常に限定されているものの、タイの映画好きの間で話題になったり、海外の映画祭に出品された作品も多く、「ぜひ観に行かねば!」と思った事も多かったです。まぁ、実際には思ったうちの7割くらいしか観られませんでしたが。
その中でも出色の出来だったのがこの『帰り道』
バンコクで不慮の死を遂げた母親の遺体を、その娘2人がバンに乗って母の故郷である南タイの村・パーダンベーサーへ送り届けるその道のりと、姉妹2人の会話や交流を描いた作品です。
妹は母のもとで暮らしているものの、絵に描いたような不良娘で、母親に小遣いをせびっては地元のショッピングセンターで遊んだり駐車場でタバコを吸ったりする不良娘。一方の姉は自立しているものの、とある事情もあって家族とは距離をおき、シンガポールで働いています。
タバコを吸っている瞬間に母親の訃報に接して動揺する妹。シンガポールで日々の仕事に忙殺されているせいで、妹からの電話がなかなか通じない姉。そして心細い一夜を一人で迎えなければならなかった妹。そのことが遺体を送り届ける道筋でも2人の間の軋轢として立ちはだかります。
そんな2人の、タイ南部までの長い道のり。そこに居合わせたバンの運転手もちょっとひと癖ある人物だったり……。
インディーズで商業的には地味な映画なのですが、主役となる妹役をメジャーなヒット作にバンバン出演しているサーイパーン=アピンヤー・サクンジャルーンスック、姉役をTVドラマの人気女優ジャカジャン=アカムシリ・スワンナスックが務めているのがキャスト的な見どころ。どちらも普段とは違った顔を見せてくれていて、ファンにとっても新鮮味のある作品といえると思います。
僕的には、物語が進むに従って2人の心情やそれぞれが置かれていく状況が明らかにされたり、この旅が進むと共に2人の関係性が変化していく様子が非常に細やかに映しだされていた所が一番気に入りました。
個人的にはちょうど10年前に父を亡くした時の葬儀の様子や、それに関した弟との会話などに照らし合わせてさらにグッと来てしまいました。
そして秀逸だったのは、ラストのパーダンベーサー村に入っていくシーン。ネタバレになるので詳しくは話せませんが、映像も演出もすべてが美しかったです。このシーンだけでも観に行く価値がある、そんな場面でした。



東京国際映画祭での監督との質疑応答もなかなか読み応えあります。DVDになったらもう一回観ようっと。