映画の中の虚構世界『I-San Special』

I-san Special2003年公開のタイ映画。
公開終了後、VCDが発売された様子はないし、
このブログの読者が見れる機会はほとんどないかもしれません。
いつもそんなCDとか映画紹介してばっかで本当に申し訳ないですが、
個人的に絶対に記録にとどめておきたい作品なので、書かせてください。
原題は『クーン・プラジャンテムドゥアン』(満月の夜)。
これは、文句なしに変な芸術映画です。
2年も前に見た作品なので、ストーリー自体はおぼろげにしか覚えていないのですが、こんな感じの内容でした。
映画の舞台は、イサーン地方のマイナーな町に行く小さなバス。
このバスの中や周辺をずっと写しているのだけど、
バスが走り出すと、中にいる乗客がいきなり「演技」をし始めます。
バスに乗る前は赤の他人同士だった女性とおばさんが、
バスが走り出したとたんに、娘と継母になってけんかし始めます。
一瞬、わけがわからなくなるのですが、根気よくしばらく見ると、
バスの乗客がメロドラマの登場人物になって、
一つのストーリーを演じているのだということがわかります。
バス自体は超オンボロのエアコンなしバスなのですが、
これが走り始めたとたん、乗客の意識が切り替わるらしく、
オンボロバスを舞台に見立て、お金持ち階級の人々が出てくるメロドラマを演じるのです。
たとえば……、
人気blogランキングに参加中! このblogを見て「おもしろい!」と思ったら
↓の画像をクリックしてください。やる気が出ちゃいます。それはもう、もりもりと。
人気BLOGランキングへ
にほんブログ村 音楽ブログへ


主役の娘がショッピングをする場面では、
荷棚をショーケースに見立てて、娘は荷棚のカバンを一つひとつ手に取って眺めていきます。
あたかも自分に合うアクセサリーを探すしぐさをしながら。
で、荷棚から気に入った品物を見つけると、
最後尾の乗客(キャッシャー役)に渡してお金を払ったり、
ホテルで食事をする場面になると、
すぐ後ろに座っていた女の子が給仕役になって、
スープ(普通の水)やイタリアンソーセージ(屋台で買ったソーセージ)をサーブしたり。
物語が進むにつれて、
バスの中をレストランやプールサイドに見立てたり、
前から3列目の席をホテルのスイートルームに見立てたりと、
ボロいバスの中でハイソな物語が繰り広げられます。
この映画の面白いところは、映画の中の登場人物が演技し始めるというところ。
つまり、単に映画というだけですでに虚構世界になっているのに、
登場人物が演技することで、虚構世界の中にもう一個深い虚構世界を
作ろうという試みをしているわけです。
「メタ・フィクション(超虚構)」ってやつに映画で挑戦してるわけです。
まさに突拍子もない発想で作られた実験映画といえます。
見たときの非日常的感覚というか、違和感は強くて、
じっくり見ればそれらを満喫できる作品でした。
ストーリー自体は平坦で、盛り上がりに欠けますが……。
(何を隠そう、僕も10分ほど寝ちゃいました)
ただ、当時は映画関係者の間でけっこう話題になったようで、
雑誌の映画評でこの映画を紹介してるのを見かけたり、
映画会社で働いてるタイ人の友達が興奮して
「I-San Special見ようよ! すごいよ、これ!」と話してくれたりしてました。